認知症の方の食事介助の注意点は?

2019.5.24

認知症の進行は「飲み込みにくい」につながりやすい

食べることは一見単純な作業にも思えますが、実は「食べ物を認知する」、「口に入れる」、「噛み砕く」、「食べ物を喉に送り込む」という複数の過程で成り立っています1)。この一連の流れを摂食嚥下といい、認知症が進行すると摂食嚥下の障害が次第に出始め、介助が必要になってきます2)

認知症の方には、個々に合わせた介助が必要です

認知症による食べる能力の低下には個人差が大きいので、その人に合わせた介助をすることが重要です。自分で食べ物をすくえる人には、利き手に箸やスプーンを持って、反対の手に食器を持つように介助したり、食べ物に集中できるように一皿ずつ提供するなど、患者さんの「食べる力」を発揮できるように介助することが大切です3)。また、自力で食べられる方の中には次々と食べ物を運んでしまう場合もあります。その際は、ひと口ごとに声をかける、ムース状の食事にするなどして誤嚥を防ぎましょう2)

食べるためには介助が必要であるにも関わらず口を開けてくれない方には、まずスプーンですくった食べ物を下唇に触れさせ、なめてもらうことで食べ物だと認知してもらいましょう。また、介助者の手を振り払ってしまう方には、本人の手に介助者の手を優しく添えて誘導すると良いでしょう3)

認知症の方の中には、食べ物を丸飲みしたり、逆になかなか飲み込まなかったりと、口の中に入れた後もうまく食べられない場合があります。そういったときには、食べ物の柔らかさやとろみなどが原因で食べにくいからかもしれません1)3)。ご本人の状態を見ながら工夫してみると良いでしょう。

1.中村育子. 知っておきたい高齢者の食と栄養.社会保険福祉協会.(2018)

2.藤島一郎. 嚥下障害のことがよくわかる本. 講談社.(2014)

3. 藤谷順子ほか. 改訂版 図解かみにくい、飲み込みにくい人の食事. 主婦と生活社.(2014)