おかゆ、ミキサー食だけで本当に大丈夫?
2019.5.24
おかゆ、きざみ食、ミキサー食の意外な落とし穴
食べる・飲みこむ機能が衰えている方のために、飲みこみやすく、むせにくいよう調理した「嚥下調整食」を提供する場合、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか。
細かくきざめば食べやすくなると考えてせっかく調理しても、飲みこみに問題のある方には不向きなことがあります。普通の硬さの食材を細かくきざんでしまうと、口の中でまとまらずに飲みこみにくくなってしまいます1)。適度なやわらかさにし、あんかけにしてまとまりやすくするなどの工夫が必要です2)。
おかゆをミキサーにかけると、粘度が高まって糊状になり、やわらかくなるどころか、かえって飲みこみづらくなってしまうので注意しましょう。でんぷんを分解する酵素や、ゼリー状にする製品などを使って適切な物性にする必要があります2)。
また、とろみ剤の風味の独特のくせを感じて好まれず食べてもらえないこともあります。好みに合うものをいくつか試してみるとよいでしょう1)。
おかゆ、きざみ食、ミキサー食だけでは、栄養不足になることも
細かくきざんだり、料理にだし汁をまぜてミキサーにかけたりすると、食事のかさが増します。そのため同じ量を食べても摂取する栄養が少なくなりがちです。食べる・飲みこむ機能が衰えている方は食事に時間がかかり、たくさん食べられないので、栄養を十分に摂れていない日が続けば、低栄養につながるリスクも高まります。低栄養を防ぐためには、嚥下調整食で摂れた栄養量を把握し、不足した栄養を補給する補助食を摂るなどの工夫が必要です3)。
低栄養になると、移動や食事など、日常生活における基本的な動作も鈍くなり、さらに口から食べられる量が減ってしまいます3)。
病院では、十分な食事が7日間以上できない場合や、意図しない体重減少が1か月で5%、6か月で10%以上見られる場合などは栄養障害に陥るリスクが高いため、栄養療法を開始する目安にしています3)4)。心配な場合はかかりつけ医に相談しましょう。
1.藤島 一郎. 嚥下障害のことがよくわかる本.講談社.(2014)
2.日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013. 日摂食嚥下リハ会誌. 17(3)255–267 (2013)
3.栢下 淳. イチからよくわかる摂食・嚥下障害と嚥下調整食 食べにくい患者への食事アプローチ.メディカ出版.(2014)
4.日本静脈経腸栄養学会. 静脈経腸栄養ガイドライン第3版.照林社.(2013)