高齢者の食事で
気をつけるポイント・
悩みと対策
高齢者の食事について徹底解説。食事内容や不足しがちな栄養と、それを補う食事のおすすめ献立メニューをご紹介します。また、食事中によくある問題や悩みについて原因と解決策を解説、食事前後の工夫や食事中の介助方法のほか、高齢者の食事の基本情報をご紹介します。
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高齢者に
適切な食事とは?
高齢になると食が細くなったり、食べにくい食材が増えたりするため、栄養不足になりがちです。高齢者には、栄養バランスの良い献立で、噛みやすく、安全に飲み込めるものを用意しましょう1)2)。
高齢者が噛みやすいものとして、刺身、豆腐、くだものなどのそのままでもやわらかいものや、切り方に工夫をしたもの、煮込んだり蒸したりしてやわらかく調理したものなどが挙げられます。一度で口に入る大きさに揃え、食材の硬さは均一にすると食べやすいでしょう2)。
飲み込みやすいものとしては、つるっとした食感のものや、とろみをつけたもの、適度な水分を含むものなどが挙げられます。口の中でまとまり、のどごしが良くなる工夫をするとよいでしょう2)。
食材については、次のような工夫をするとよいでしょう。
高齢者が食べにくい食材1)
-
繊維が多く硬い
(ごぼう、れんこん、いか、たこなど) -
水分が少ない
(トースト、せんべいなど) -
上あごに張り付いて取れにくい
(焼きのり、わかめなど) -
硬い粒が口の中でばらばらになる
(チャーハン、野菜のみじん切りなど) -
のどの通りが良すぎる
(なめこ、汁物、水など) -
粘りや弾力が強い
(もち、かまぼこ、こんにゃく、椎茸など) -
口の奥で形がつぶれる
(豆腐など) -
粉っぽい
(きな粉や粉砂糖をまぶした菓子など) -
酸味が強すぎる
(柑橘類、酢醤油など) -
すすりあげて食べるもの
(麺類)
食べやすくする工夫1)2)
- 葉物は、やわらかくゆで、繊維を断ち切る。
- 根菜や果菜は、食べる方に合った硬さに調理し、煮汁にとろみづけ。繊維は断ち切ったり、隠し包丁を入れたりする。
- 生野菜は千切りにしてあえ物にしたり塩もみに。トマトは皮剥きがおすすめ。
- パサつきがちないも類は、熱いうちにつぶして牛乳やだし汁などの水分を加えたり、とろみや油を足したりして口当たりよく。
- 卵はやわらかい半熟に。オムレツや卵焼きは、牛乳やだし汁などの水分を加えてやわらかく。茶わん蒸しの具はやわらかい食材を小さめに。
- 豆腐は絹ごし豆腐やざる豆腐、納豆はひきわりがおすすめ。豆を裏ごししたポタージュや、やわらかく煮た豆の入ったスープも食べやすい。
- 海藻類は、しっかり戻してやわらかめに煮る。もずくは刻み、とろろ昆布は小さく切り、焼きのりはもむと食べやすい。ジュースと寒天を一緒にミキサーにかけた、寒天ドリンクがおすすめ。
- 筋があったり弾力があったりする刺身は、隠し包丁を入れたり、たたきにしたり、小さく切ると食べやすい。加熱するときは、ホイル焼きするとパサつかずしっとり。あんかけや、煮汁にとろみをつけると、まとまって飲み込みやすい。
- 肉類は、脂肪分を含み、やわらかいものを選ぶ。繊維を断つように切ると食べやすい。片栗粉をまぶして加熱し、のどごし良く。
高齢者に必要な食事量とは?
高齢者に必要なカロリー(エネルギー)は、加齢とともに減少します。
身体活動レベルがⅠ(低い)~Ⅱ(ふつう)の方であれば、1日に必要なエネルギーは次の通りです3)
- 65~74歳:男性2050~2400kcal、女性1550~1850kcal
- 75歳以上:男性1800~2100kcal、女性1400~1650kcal
一方で、タンパク質の1日あたりの推奨量は、男性は65歳以上になると65gから60gへとやや少なくなりますが、女性では成人以降変わらず50gのままです3)。
> 詳しくは、高齢者の食事量のページをご参照ください。高齢者に必要な栄養と
不足しがちな栄養とは?
高齢者の食事は、塩分の摂りすぎに注意し、不足しがちなカルシウムを積極的に摂ることを意識しましょう4)。また、食が細くなっている方はたんぱく質の不足に注意が必要です1)。一度にたくさん食べられなくなり、カロリーや栄養不足だな、最近やせてきたなと感じたら、間食を上手に利用したり、メニューや食材を工夫したりするとよいでしょう1)。
不足しがちな栄養・カロリーを
補うおすすめメニュー
高齢者の食事で不足しがちなカロリー、たんぱく質、カルシウム、食物繊維をたっぷり含むおすすめメニュー3品をご紹介します。
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- 小松菜の豆乳スムージー
- 不足しがちな食物繊維と
たんぱく質をおいしく手軽に補給。
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- グリーンピースと
ジャガイモのポタージュ - 豆もポタージュで食べやすく、
食物繊維とたんぱく質が豊富な一品。
- グリーンピースと
-
- イチゴ豆乳プリン
- おやつでもしっかり栄養補給。
高たんぱく高エネルギーなおやつ。
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高齢者の食事で
気をつけること
いろいろな食品をバランスよく、高齢者本人が食べやすい食事を用意し、食事の好みに合っているか、飲み込む力(嚥下機能)は低下していないか、食事を楽しんでいるかといった点に気遣うことが大切です。高齢者の味覚は低下しがちなので好みの味付けを優先しておいしく食べてもらいましょう。料理の香り付け、盛り付け、季節感のあるメニューなどの食欲を増進させる工夫するのもおすすめです1)。
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高齢者の食事に
よくある悩みと解決策
しっかり食べてもらうにはどうしたらよいのか、高齢者の食事でよくある悩みや問題と考えられる原因と解決策をご紹介します。
お悩み1食事を食べてくれない
- 好みでない:飲み込みに配慮した食事でも、本人の好みに合わず食べてくれない場合は、医師や管理栄養士と相談してみましょう5)。また、味覚、嗅覚、視覚の衰えのため、おいしく感じられず、食欲が落ちる場合には、味付けや香り付け、盛り付けを工夫して、食欲を刺激しましょう1)。
- 口腔内の問題が原因:入れ歯や口腔衛生の問題で噛めなくなり、食事がとれないことがあります。適切な治療を受けるほか、入れ歯の不具合を調整してもらうことが必要です。医師や歯科医師に相談して、むし歯や歯周病、噛み合わせをチェックしてもらいましょう1)。
- 孤独感が原因:近所の人を誘ったり、地域の食事会に参加したりするのもよいでしょう1)。
お悩み2食事中、または
食後に吐いてしまう
まずは、健康に問題がないか確認しましょう1)。
食後すぐに横になるために嘔吐してしまう可能性もあります。食事の後2時間程度は座った状態で過ごしましょう5)6)。
お悩み3飲み込めない、
むせてしまう
高齢になると、運動機能や精神活動に問題が生じるほか、病気などで飲み込む能力が低下してしまうことがあります。飲み込みづらさ・むせは、嚥下機能低下のサインかもしれません。必要に応じて、医師や管理栄養士に相談してみるのもよいでしょう。
また、食事ではむせやすい食品を避け、飲み込みやすい食品を提供することも大切です6)。
むせやすい食品の例
- とうもろこしなど、「ばらばら」とまとまりのないもの
- 鶏のささみなど「ぱさぱさ」したもの
- もちなど「ぺったり」して粘膜にはりつきやすいもの
飲み込みやすい食品の例
- ゼリーやプリンなど「ぷるん」、「つるん」としたもの
- とろみ剤を加えたお茶やお味噌汁など
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食事介助の
ポイントと注意点
食べる力は人それぞれ。個々の状態に合わせた食事の準備はとても大切です2)。噛みやすい、飲み込みやすいように、食べ物の固さ、大きさ、とろみを調整することはもちろんのこと1)、環境を整えることや食べる姿勢なども重要です6)。ここでは、食事介助のポイントと注意点をご紹介します。
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食事前カーテンを開け、しっかり目覚めてもらいます。洋服に着替え、手を洗い、食事を楽しみにしてもらえるように会話しましょう。好きな音楽を流す、テーブルコーディネートに気を配る、献立の説明をするのもおすすめです2)。また、飲み込みやすく誤嚥しにくい姿勢も大切。できれば座位で、難しい場合は45~60度くらいの傾斜がよいでしょう6)。座って食事をする場合 ベッドの上で食事をする場合
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食事中食事中は、一度に口に入れる量は少なめに。しっかり飲み込みおなかに収まってから次の一口を入れるようにしましょう6)。
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食事後食事後は、口の中に食物を残さないようにしっかりと口腔ケア。食後すぐに横になると逆流による誤嚥が起こりやすくなるので、2時間は座って過ごしましょう6)。