高齢者が食事で
むせる原因とは?
むせ続けるとどうなる?
予防嚥下障害を解説

高齢になると食事中にむせることが多くなることがあります。「むせ」は本来健康な人でも起こりうるからだの防御反応ですが、頻繁に発生して食事がしっかり摂れないという状況には注意が必要です。ここではむせが起こる仕組み、むせを予防する食事方法などをご紹介していきます。

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高齢者が食べ物や飲み物でむせる原因とは

高齢者が食事や飲み物でむせる原因は、加齢にともない、飲み込む力が低下して上手く食べ物を食道に送りこめなかったり、飲み込むタイミングと気管が閉じるタイミングが合わなくなったりすることなどです1)。これらの原因により、本来食道に入るはずの食べ物や飲み物が誤って気管に入り、それを外に追い出そうとして強い空気の流れが作られます。この空気の流れが「むせ」の正体です2)3)。通常、むせは誰にでも起こりうることですが、高齢者が頻繁にむせたりよく痰がからんだりする場合は、飲み込む力である「嚥下」機能が低下している状態、いわゆる嚥下障害の可能性があるため注意が必要です。

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高齢者の食事中に
むせるのを予防する方法

むせは日常の生活のちょっとしたことに気をつけると防ぐことができます。

むせやすい食品の摂取を避ける4)

食事中のむせを予防するためには、飲み込みにくい食品を避けることが重要です。飲み込みにくい食品には、「ばらばら」「ぱさぱさ」「ぺったり」しているという特徴があり、とうもろこしのようにばらばらでまとまりにくいもの、鶏のささみのようにぱさぱさしているもの、のりやもちなどの粘膜にはりつきやすいものが当てはまります。このような食品はできる限りそのままの状態で食べないようにするとよいでしょう。

むせにくく飲み込みやすい
食事
を提供する4)

飲み込みやすい食品の特徴としては、「ぷるん」「つるん」としており食べやすくまとまりやすいことが挙げられます。ゼリー、プリン、ヨーグルト、卵豆腐などが代表的な食品です。

しかし、飲み込みやすい食品ばかりを選んで食べていると、栄養バランスが偏ってしまうことがあるため、調理法を工夫することで様々な食品を飲み込みやすくして摂ることが大切です。例えば、作った料理に水分を加え、ミキサーにかけた後にゼラチンを加えることでゼリー寄せにしたり、お茶やお味噌汁などさらさらとしているものにとろみ剤を加えたりすることでまとまりやすくすることができます。

食事中にむせにくい姿勢を維持する4)

飲み込みやすい食品の特徴としては、「ぷるん」「つるん」としており食べやすくまとまりやすいことが挙げられます。ゼリー、プリン、ヨーグルト、卵豆腐などが代表的な食品です。

食事をするときの姿勢を工夫することで、むせにくい状態にすることもできます。
座れる場合は、姿勢が安定するように、かかとがしっかりと床につく椅子と適切な高さのテーブルを用意します。やや前かがみの姿勢であごを引き気味にすることで、食べ物を飲み込みやすい体勢をとることができます。
座れない場合は、ベッドの背を30度から60度ほどの角度をつけ、やや傾斜をつけた姿勢で食べるのがよいでしょう。そのとき、誤嚥予防のため頭の後ろに枕やクッションを置き、首がやや前に曲がるようにしておくのもポイントです。

一口の量を少なくし、
ゆっくり食べさせる

飲み込みやすい食品の特徴としては、「ぷるん」「つるん」としており食べやすくまとまりやすいことが挙げられます。ゼリー、プリン、ヨーグルト、卵豆腐などが代表的な食品です。

むせやすい人は次々に食事を口に運んでしまう傾向があります。急いで食事をしたり、一口の量が多すぎたりすると、飲み込めずに残った食べ物が気管へと入り込み誤嚥や窒息を引き起こしてしまう危険性が高まります4)
最初は薄く小さなスプーンを使って、3~5g程度(ティースプーン1杯)の少量の食事を口に入れるようにして、様子を見ながら少しずつ量を調整するようにしましょう4)5)。口に入れた後は、ゆっくりとよく噛み、飲み込んだものが食道を通過しておなかに収まったのを感じてから次の食事を口に運ぶようにすることが重要です。ただし、食事時間が延びると疲労による誤嚥のリスクが高くなりますので、長くても30~40分程度で食べ終わるようにするとよいでしょう1)

食前嚥下体操をする6)

食べ物を上手に飲み込めるように、嚥下に関わっている筋力の緊張を食前にほぐすのもおすすめです。一連の嚥下体操が終わったら、水分で口の中を潤わせてから食事を始めるとよいでしょう。

ステップ
1
首の
運動
リラックスした姿勢で、首を左と右に3回ずつ傾ける。その後首を左右に大きく一回ずつ回す。腹式呼吸をしながら行うとよい。
ステップ
2
肩の
運動
両肩を上げて一度止めてから力を抜いて落とす。この動きを3回行う。肩を上げるときに息を吸い、落とすときに吐くようにする。
ステップ
3
上体の
運動
上半身の力を抜き左右に大きくゆっくり倒す。この動きを左右各3回行う。
ステップ
4
口の
運動
唇を閉じてほっぺたを膨らませた後、すぼませる。この動きを2~3回繰り返して行う。
ステップ
5
舌の
運動
口をなるべく横に大きく開けて、舌を出して引っ込める。この動きを2~3回繰り返す。その後、舌を左右の口角に2~3回ずつつける。
ステップ
6
声の
運動
「パパパ、タタタ、ラララ」とできる限り大きな声で言う。その後ゆっくりと腹式呼吸をする。

3

嚥下障害とは7)

嚥下障害とは、食べ物を飲み込む力が低下している状態のことを言います。食べることがままならないと、口からの食事では栄養を十分に摂取できず、栄養障害や脱水に陥ってしまう恐れがあります。栄養障害に陥ると、からだの中のたんぱく質が不足して、全身の筋力が低下します。食べる動作に関わる筋力も低下するため、嚥下障害がさらに進行するという悪循環に陥ってしまいます。そのため嚥下障害をなるべく早期に発見し、適切な対策をとることが重要です。

4

嚥下機能が
低下したとき
の状態とは4)5)

嚥下障害のサインは日常生活の中に隠れています。思い当たることがないかチェックしてみましょう。

<嚥下障害のサイン>

  • 食事中によくむせたり、咳き込んだりする
  • 食事の後に声が変わる、ガラガラ声になる
  • よく痰がからむ
  • のどや胸に何かつかえているような違和感がある
  • 食後に胸やけがある
  • 食事に時間がかかるようになった。疲れてしまい残すようになった
  • 食事の好みが変わり、水分やぱさぱさしたものを避けるようになった
  • 食べこぼしが多くなった
  • やせてきた

これらのような状態が続く場合は、嚥下障害に限らず、からだに何かしらの異変が生じている可能性があります。少しでも思い当たることがあれば専門の医師に相談してみましょう。
>嚥下とは?

5

むせることが続く
どうなる?7)

むせは、嚥下機能が低下したときの症状の一つです。食事中に何度もむせることが続いたり、それによって食べることに支障が出たりしている場合は、低栄養を引き起こす可能性も高まるため、のどを専門とする耳鼻咽喉科などをできるだけはやく受診することが大切です。