腸が免疫機能を司るって本当?

2019.5.17

口からつながっている「腸管」は体内最大の免疫システム

高齢の方にとって、感染症は命にかかわることもあるため、ふだんから対策や予防が必要です。手洗いやうがいなどをしっかり行うことももちろん重要ですが1)、ご本人の免疫機能を高めることも重要です。
免疫機能のカギを握るのが、大腸や小腸などの「腸管」です。腸管の主な役割はご存じの通り食べ物の消化吸収ですが、それだけではなく、実は体内で最大の免疫システムでもあります。

感染症を引き起こすウイルスや細菌は、口や鼻から体内に入ってきます。腸管は、口から入ったものを消化吸収して全身に届ける器官であるため、口や鼻から入った体に悪いものまで吸収してしまわないよう、病原菌などの異物としっかり戦う免疫の機能が備わっているのです2)3)
腸管には、免疫の機能を果たすために働く「免疫細胞」や「抗体」が体全体の6割以上も集まっているといわれています。この免疫システムは「腸管免疫」と呼ばれています3)

腸管免疫の機能を支える腸内フローラ

私たちの腸の中には、およそ100種類以上、100兆個を超える膨大な量の細菌が存在しています4)。これらの細菌の集まりは腸内フローラ(腸内細菌叢ともいいます)と呼ばれ、健康に大きな影響を与えます2)4)。そして近年、腸内フローラは腸管免疫の機能にも深いかかわりがあることがわかってきました。腸内フローラのバランスが良いと、腸管免疫がよく働くようになり、腸管免疫がよく働いていると、腸内フローラのバランスが良くなるという、お互いに影響し合う関係にあったのです5)

便通だけでなく、免疫機能にもつながる腸内フローラ。意識してバランスを整えて、免疫力アップを目指しましょう。

腸管免疫の機能を支える腸内フローラ

  1. 高齢者介護施設における感染対策マニュアル. 株式会社三菱総合研究所 人間・生活研究本部編.(2013)
  2. 光岡知足、腸内細菌学雑誌.25(2)113-124(2011)
  3. 公益財団法人日本ビフィズス菌センター・腸内細菌学会ウェブサイト. 用語集「腸管免疫(gut immunity)」(2019年2月18日アクセス)
  4. e-ヘルスネット 腸内細菌と健康(厚生労働省)
  5. Kawamoto S. et al. Immunity 41(1)152-165(2014)