たんぱく質不足の
サインとは?
体への影響と
今日からできる対策
たんぱく質が不足すると集中力の低下や、筋力の衰えで基礎代謝が落ち、太りやすくやせにくいからだになるなどさまざまな影響がでることがあります。今回はたんぱく質不足が原因で出てくるからだの変化や、たんぱく質を効率よく摂取する方法をご紹介します。
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たんぱく質が不足すると
どうなる?
からだへの影響は?
「たんぱく質は、生きていくために必ず摂取しなければならない栄養素です。というのも、たんぱく質は私たちのからだを構成する大切な要素にもかかわらず、からだでは他の栄養素からたんぱく質をつくることができないからです。たんぱく質は、たとえば筋肉にとってとても重要な材料です。たんぱく質が不足すると、筋肉の量に変化をもたらしてからだに影響が現れる可能性があります。
筋肉量が落ちて太りやすい体質に
筋肉はからだのなかで特に大きな組織で、からだのたんぱく質の50%は筋肉にあります。普段実感することはないかもしれませんが、筋肉のたんぱく質は合成と分解を常に繰り返しています。通常、合成と分解のバランスは保たれています。ところが、特に高齢者で食事からのたんぱく質の摂取量が減ると、このバランスが崩れて筋肉が減ってしまうと考えられています1)。筋肉が少なくなると基礎代謝量が低くなり、エネルギーを消費しにくくなります。つまり、同じ量を食べても太りやすくなる可能性があります2)。
集中力が低下しやすくなる
脳の栄養といえばブドウ糖のイメージが強いかもしれませんが、たんぱく質も脳にとって欠かせない栄養素であるといわれています。脳では絶えず情報の伝達が行われており、神経伝達物質がこれを担っています。なかでも記憶、情動、気分に関与する神経伝達物質は必須アミノ酸を材料に体内で作られます。からだは必須アミノ酸を作り出すことができないので、食事からのたんぱく質が必要なのです3)。たとえばセロトニンという神経伝達物質は精神を安定させる働きがあります2)。
むくみや免疫力への影響も
たんぱく質は、体液を調整する役割もあります。たんぱく質の摂取不足により体内の水分バランスが崩れ、むくみを生じます。また、からだに備わる免疫システムで重要な役割を担う抗体もたんぱく質です4)。
たんぱく質の摂りすぎの影響は?
たんぱく質の摂りすぎが続いたときの健康への影響が考えられるとすれば、腎臓の働きへの影響です。しかし、摂取基準などは決められていないのが現状です5)。
不足し続けるとどうなる?
子どもの場合
成長期にはからだがどんどん大きくなります。言い換えればからだを構成するたんぱく質がどんどん蓄積されるということ。成長に必要なたんぱく質を余分にとらなければいけません2)。
高齢者の場合
高齢者のたんぱく質不足は、高齢者が陥るリスクの高い低栄養状態の一つです。低栄養になると、傷が治りにくくなる、筋肉が萎縮するといった状態を招きます6)。また、フレイル7)やサルコペニア8)に直接影響すると考えられています5)。
>低栄養について
>フレイルとは?
>サルコペニアとは?
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たんぱく質の1日の
必要摂取量と推奨量
厚生労働省は「食事摂取基準2020」で、たんぱく質をどれくらい摂ればよいかを示す基準として、推定平均必要量、推奨量、目標量、目安量(乳児)を定めています5)。
「推定平均必要量」とは、からだのたんぱく質の量を維持するのに必要な量です。確率的には全体の50%の人にとって十分といえる量です。子どもや妊婦には、成長や胎児の発育に必要なたんぱく質の量がプラスされています5)。「推奨量」とは、推定平均必要量をもとに個人差などを考慮した量です。ほとんどの人にとって十分といえる量です。推定必要摂取量に1.25を掛けた値です5)。
なお、「目標量」は炭水化物や脂質の摂取量とのバランスの観点から定めされています。たとえば65歳以上の方では、たんぱく質をエネルギー(kcal)に換算したときに、全体の15〜20%の範囲に収まるように摂取することを目標量としています5)。
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢等 | 推定平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 目標量1 | 推定平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 目標量1 |
0〜5(月) | 10 | 10 | ||||||
6〜8(月) | 15 | 15 | ||||||
9〜11(月) | 25 | 25 | ||||||
1〜2(歳) | 15 | 20 | 13〜20 | 15 | 20 | 13〜20 | ||
3〜5(歳) | 20 | 25 | 13〜20 | 20 | 25 | 13〜20 | ||
6〜7(歳) | 25 | 30 | 13〜20 | 25 | 30 | 13〜20 | ||
8〜9(歳) | 30 | 40 | 13〜20 | 30 | 40 | 13〜20 | ||
10〜11(歳) | 40 | 45 | 13〜20 | 40 | 50 | 13〜20 | ||
12〜14(歳) | 50 | 60 | 13〜20 | 45 | 55 | 13〜20 | ||
15〜17(歳) | 50 | 65 | 13〜20 | 45 | 55 | 13〜20 | ||
18〜29(歳) | 50 | 65 | 13〜20 | 40 | 50 | 13〜20 | ||
30〜49(歳) | 50 | 65 | 13〜20 | 40 | 50 | 13〜20 | ||
50〜64(歳) | 50 | 65 | 14〜20 | 40 | 50 | 14〜20 | ||
65〜74(歳)2 | 50 | 60 | 15〜20 | 40 | 50 | 15〜20 | ||
75以上(歳)2 | 50 | 60 | 15〜20 | 40 | 50 | 15〜20 | ||
妊婦(付加量) | ||||||||
初期 | +15 | +20 | 3 | |||||
中期 | +15 | +20 | 3 | |||||
後期 | +15 | +20 | 4 | |||||
授乳婦(付加量) | +15 | +20 | 4 |
- 1範囲に関しては、おおむねの値を示したものであり、弾力的に運用すること。
- 265歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が 参照体位に比べて小さい者や、特に75歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい。
- 3妊婦(初期・中期)の目標量は、13~20% エネルギーとした。
- 4妊婦(後期)及び授乳婦の目標量は、15~20% エネルギーとした。
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たんぱく質不足を
対策する方法
アジ中1尾(可食部)120g | 23.6 |
---|---|
サケ1切れ 80g | 15.7 |
あさり水煮缶10粒(40g) | 8.1 |
牛もも肉100g | 20.2 |
鶏ささ身1本(40g) | 9.6 |
鶏むね肉(皮なし)100g | 23.3 |
豚もも肉100g | 21.5 |
鶏レバー60g | 11.3 |
卵Mサイズ1個 50g | 6.1 |
煮豆(ゆで大豆)1食 30g | 4.4 |
木綿豆腐1/3丁(100g) | 7.0 |
納豆1パック(45g) | 7.4 |
豆乳コップ1杯(200ml) | 7.2 |
牛乳コップ1杯(200ml) | 6.6 |
ヨーグルト1カップ(80g) | 2.9 |
今日からできる!
効率よくたんぱく質を摂る方法
たんぱく質は、どのアミノ酸で構成されているかによって体内での利用率が変わってきます。利用率が高いほうが良質で、肉、魚、卵、豆などに含まれるたんぱく質が挙げられます2)。これらの食材を少し意識するだけで、食事から摂取できるたんぱく質の量がぐんとアップしますよ。
食事で補う方法
朝ごはんにプラス
ごはんに味噌汁のメニューなら、調理のいらない生卵や納豆をプラスします。ゆで卵を作り置きしておけば、パンの日にも合わせやすいですね。牛乳やヨーグルトもたんぱく質を多く含むので、積極的に摂りたい食品です。
- メニュー例
-
- 牛乳
- パン
- ゆで卵
- ヨーグルト
- キウイフルーツ
-
- 納豆
- おひたし
- ごはん
- みそ汁
- 生卵
おやつにプラス
コーヒータイムは、コーヒーよりカフェオレに。豆乳ラテもよいですね。最近はヨーグルトのバラエティも豊富でデザート感覚で楽しめるものもありますし、飲むヨーグルトも手軽です。コンビニやドラッグストアに行けば、たんぱく質を強化したクッキーやビスケットなども手に入ります。
調理の手間を省いて
時短調理の強い味方、電子レンジを活用すると調理のハードルがぐっと下がります。肉じゃがや魚の煮付けなどの料理は、材料を混ぜて加熱するだけで出来上がります10)。電子レンジ用の調理器具の種類も豊富です。蒸し料理が上手にできるスチーマーやゆで卵専用の蒸し器など、思い立ったらすぐに調理できるのでおすすめです。
サプリやプロテインで補う方法
プロテインパウダーやアミノ酸のサプリメントも市販されているので、食事からのたんぱく質が足りないときに利用するのもよいかもしれません。筋肉をつけるには運動した後すぐにたんぱく質を摂るとよいといわれています11)。
ただし、高齢者でたんぱく質のサプリメント摂取の筋肉量や筋力への効果を調べた研究では、明らかな改善効果はみられていません5)。あくまで補助的に使うことをおすすめします。
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なぜたんぱく質不足
になるのか?
たんぱく質不足は、食が細くなった高齢の方に多くみられます2)。このような低栄養の高齢者の割合を抑えていくことが国を挙げての目標にもなっています12)。
過度のダイエットでたんぱく質が不足する場合もあります。若い女性のやせの割合は、65歳以上で低栄養状態の方の割合より高く、たんぱく質を始めとした種々の栄養素の不足が懸念されています13)。適切な体重を理解し、誤ったダイエットで栄養バランスが偏らないように心がけましょう2)。
これを機に食生活や健康状態とじっくり向き合ってみてはいかがでしょうか。