低栄養 がん治療初期の食の不安に
2019.5.24
治療初期の食の不安
治療前には「抗がん剤の副作用」として、脱毛や倦怠感のほか、味覚障害や食欲不振、下痢や便秘などの食に関するものも多く説明されます。「やせていくのかな」「何を食べてもおいしくない?」と不安になることも多いのでは。また、家庭をお持ちの方だと「そんなにつらい治療をしながら食事を作れるのかな。夫や子どもには手作りのものを食べてほしいのに」と思う方もいらっしゃるかもしれません。まだ治療が始まっていなくても不安で眠れなくなったり、食欲がなくなったりしてしまうことも。
でもひとりじゃありません。医師も看護師も、そして薬剤師や栄養士などたくさんのスタッフが支えてくれます。そして副作用はずっと続くものではなく、きっと乗り越えられます。乗り越えるための、少しだけの予備知識を今日はお伝えします。
食に関わる副作用はそれぞれ
「この抗がん剤を使うと副作用で味覚障害が起こりやすい」ということはいくつかの抗がん剤で知られています。しかし必ず起こるわけでもなければ、いつ起こるかも人によってそれぞれです。たとえば1クール目で「味がわからなくなった」という患者さんでも2クール目では「ごはんもおいしいよ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。また、治療した日や翌日は疲れて食欲がおちる方でも3日目からは普段どおりに食べられる、ということもあります。
また、それぞれの症状に応じて、色々な機能をもった栄養補助食品もあります。たくさんの不安におしつぶされず、今からの治療に向けて食べられるものをしっかり食べて、体力をつけられるといいですね。
いままでの食への後悔は禁物
がんを診断されてから自分のいままでの食事を後悔したり、逆に「こんなに食事に気をつけていたのにどうして」と思ったりするのはとてもつらいことです。今日あなたが食べるものは今日から生きる力になります。有機野菜や無添加食品に強くこだわるよりも、新鮮な野菜をおいしく摂れるのがすてきなことです。調理するのが面倒であればミニトマトをつまむことから始めてみるのもひとつですね。野菜や果物も、おいしく、義務的ではなく前向きに食べられること、それが代謝をよくして本当の意味での体調を整えてくれることにつながります。
毎日向き合う生活の一部だから
食事は毎日3回、1年だと1000回以上も向き合うもの。だからこそ毎回の食事を完璧にすることにこだわらないで。今日食べられなくても明日があります。足りないときにはそれを補う食品もあります。その時その時に、これなら食べられる、という食品を見つけることで選択肢も広がります。「病気になるまで食べたことがなかったのに」と野菜をおいしく感じたり、適量の間食を楽しんだりする方もいらっしゃいます。
がんと診断されてから治療が始まりやがて社会復帰していく、というそれぞれのステージで生じる食に関する悩みや不安は、ぜひ管理栄養士をはじめとした医療関係者に相談してみてくださいね。
この記事の監修
徳島大学医学部代謝栄養学分野 講師
管理栄養士
堤 理恵 先生