誤嚥 ごえん を防ぐ】
とろみ食作り方
作るポイント
注意点、レシピ

誤嚥を防ぐため、飲み込む力が弱い方の食事にはとろみをつけることが必要です。市販のとろみ剤は手軽に使えますが、使用する量や作り方を守らないと逆に誤嚥につながる恐れもあります。
ここではとろみ剤の正しい使い方、注意点とポイント、簡単に作れるレシピや適切なとろみのレベルなどを紹介します。

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とろみとは?

食べ物を飲み込む嚥下の機能が弱くなったとき、食事をやわらかくしたり細かくしたりするだけでは十分ではありません。嚥下しやすい食事にはさまざまなレベルがありますが、舌や歯ぐきで食べ物を押しつぶすことができる人であっても「口の中でまとまりやすくばらばらにならない」など、誤嚥を防ぐための配慮は必要です1)2)
とろみとは、水分に粘度がある状態のことで、飲み物だけではなく食事に含まれる水分にとろみをつけることで、誤嚥を防ぎ、より安全に食事ができるようになります1)2)3)

飲み込みやすい食事とは?

嚥下機能が弱ってきた方でも飲み込みやすい食事を提供するためには、ソフト食やミキサー食といった介護食の種類にかかわらず、共通する4つの条件を満たすことが重要です2)

飲み込みやすい食事に
共通する4つの条件
  • 密度が均一
  • ばらばらになりにくい(まとまりやすい)
  • 変形しやすい
  • べたつかない

とろみ剤やゼラチンでとろみをつけたりまとめたりすることによって、これらの条件を満たすことができます2)。汁物などの水分にはとろみをけるのが原則です1)
>嚥下食とは?
>ミキサー食の作り方

とろみをつけても誤嚥に注意

誤嚥を防ぐためにとろみをつけるのですから、とろみの強さはその人の飲み込む力に適切な濃さに正しく合わせなければなりません。あまりに強いとろみはおいしくなくなるばかりか、口やのどにくっつきやすくなりむしろ飲み込みにくくなります4)5)。のどにくっついて残ったとろみは、食後しばらくしてから気管に入ってしまう可能性があり、誤嚥のリスクとなるので注意が必要です。
>誤嚥とは?

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とろみのつけ方と
ポイント

とろみをつけるときに便利なのが、市販されているとろみ剤(とろみ調整食品)といわれる増粘剤です。ジュースやお茶だけでなく、みそ汁など水分のある料理にも使用できます。温かいものでも冷たいものでも、液体に加えて混ぜるだけで簡単に均一なとろみをつけることができますし、とろみの強さの調整も簡単です2)4)5)
また、片栗粉やマヨネーズ、ホワイトソースなどの調味料を用いる方法や、とろろいもやおくらなどの天然のとろみ食材を活用する方法もあります。

市販のとろみ剤を
使用するときのポイント

とろみ剤は適量を使う

とろみ剤の多くは食材の風味に影響が出ないようになっていますが、独特のくせを感じる人もいるので、とろみを嫌がるときは薄めに調整します。最近は少量でもとろみが得られる製品も普及していますが、とろみ剤を少し増量しただけで、とろみの強さが大きく変わることもあるため注意が必要です2)4)5)。とろみ剤の分量は、製品の指示通りとし、医師や栄養士などから指導された使用量がある場合はそれを守るのが原則です。むせることなどがある場合はその都度相談するようにしましょう。

ダマにならないように混ぜ、
とろみがつくまで待つ

とろみ剤は投入したら素早くダマにならないように30秒ほど混ぜます。混ぜたあとは一定の時間をおかないととろみがつきません。その時間を待たずに「とろみがつかない」と判断してしまい、増量しすぎないように注意が必要です。とろみがつきにくい液体の場合は一度混ぜてから2~15分おき、再度30~60秒ほど混ぜるようにするのがポイントです4)5)

調味料や食材を工夫して
とろみをつけるときのポイント

レシピに応じて使い分ける

とろみづけに使用する素材は、特徴や注意点を把握したうえでメニューに合わせて選ぶとよいでしょう。

とろみづけに
使用する素材
特徴 注意点 調理例
片栗粉 ・水に溶いてから加熱する必要がある ・ダマができやすいのでしっかり混ぜてから加える。
・唾液に含まれる酵素でとろみが分解されてサラサラになる。
・切り身魚のあんかけ
・豆腐のあんかけ
・卵のあんかけ
・肉団子のあんかけ
ゼラチン ・加熱して溶かし、5度以下で冷蔵して固める必要がある。 ・体温で溶けるので、口のなかに長くとどまるとサラサラになる。 ・フルーツゼリー
・スープのゼリー
・ミキサーにかけた肉料理のゼリー寄せ
(テリーヌ)
ホワイト
ソース
・バターと小麦粉で風味豊かに仕上げることができる。
・エネルギーアップができる。
・冷たくなると固くなるので、そのようなときは温めたり、スープや牛乳で適度に伸ばしたりして使う。 ・クリームシチュー
・魚や野菜のクリーム煮
・グラタン
・ドリア
マヨネーズ ・和えるだけで簡単に食材をまとめることができる。
・エネルギーアップができる。
・肉や魚をやわらかくする働きもある。
・同じ味になりやすいので、すりごまや梅肉、みそ、ケチャップなどを混ぜるなどして味に変化を持たせると良い。 ・野菜のマヨネーズ和え
・切り身魚のマヨネーズ焼き

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鮭フレークで!
「ふんわりお魚ハンバーグ~とろーり和風あんかけ~」

※写真のねぎは飾りです。食べにくい方は除いてください。
材料(2人分)
  • 木綿豆腐
    300g
  • 鮭フレーク
    大さじ2(30g)
  • 小ねぎ
    2本
  • 片栗粉
    大さじ2
  • サラダ油
    大さじ1
〈あん〉
  • 100ml
  • 顆粒和風だし
    小さじ1/4
  • 薄口しょうゆ
    小さじ1/2
  • 片栗粉またはとろみ剤
    1.5g
    (小さじ1と
    ひとつまみ)
  • 鮭フレーク(トッピング用)
    小さじ1
栄養価(1人分)
  • エネルギー
    237kcal
  • たんぱく質
    10.5g
  • 塩分
    1.9g
作り方
  1. 豆腐はキッチンペーパーに包んで耐熱容器に入れ、600wで1分30秒加熱し、粗熱をとっておく。小ねぎは小口切りにしておく。
  2. 1をボウルに移し手でつぶしたら、鮭フレーク、小ねぎ、片栗粉も加えてよく混ぜる。4等分して小判型に形を整える。
  3. フライパンに油を熱し2を焼く。こんがりと焼き色がついたら返して、もう片面も焼く。
  4. 片栗粉を使用する場合:
    小鍋に〈あん〉の材料を入れて、かき混ぜながら中火で加熱して沸騰させ、とろみをつける。
    とろみ剤を使用する場合:
    小鍋に〈あん〉の材料を入れて、ダマにならないように素早くかき混ぜながらあたためる。
  5. 3を、器に盛り付け、4のあんをかける。鮭フレークをトッピングする。

ポイント

  • あんは、ダマにならないように絶えず混ぜ、しっかりと全体が沸騰するまで加熱しましょう。
  • むせやすい方は、トッピングの鮭フレークをあんに混ぜ込んで召し上がっていただくと飲み込みやすくなります。

4

とろみの種類

食べる、飲み込む機能が特に衰えている方へのとろみの基準は「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に分けられています1)6)

  • 薄いとろみ:スプーンを傾けるとすっと流れ落ちる。「drink」するという表現が適切な とろみの程度。ストローで容易に吸うことができます。
  • 中間のとろみ:スプーンを傾けるととろとろと流れる。舌の上でまとめやすい。ストローで吸うのは抵抗がある。
  • 濃いとろみ:スプーンを傾けても形状がある程度保たれ、流れにくい。スプーンで「eat」するという表現が適切なとろみの程度。
薄いとろみ
スプーンを傾けると
すっと流れ落ちる。
食品例:
ポタージュスープ
中間のとろみ
スプーンを傾けると、
とろとろ流れ落ちる。
食品例:
オイスターソース
濃いとろみ
スプーンを傾けても、
形状がある程度
保たれ流れにくい。
食品例:
ハードタイプのヨーグルト
「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021. 日摂食嚥下リハ会誌. 25(2)135–149(2021)、
栢下 淳、嚥下調整食の分類について―舌圧および栄養との関連―. 老年歯科医学.33(2)45-51(2018)より作成