ADL(日常生活活動)
とは?基礎知識と低下
した場合にできること
ADLは生活を送るために行う活動の能力のことであり、日常生活活動(動作)とも呼ばれています。ADLの基礎知識と評価方法、維持するためのポイントについてわかりやすく解説します。
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ADLとはどういう意味?
ADLとは、Activities of Daily Livingの略で、生活を送るために行う活動の能力のことです1)2)。歩行や階段の上り下りといった移動動作および食事や服の着脱、排泄、整容など身の回りの動作を行う能力を基本的ADLといいます。また、基本的ADLの次の段階として手段的ADLがあり、買い物や洗濯など、より複雑な日常生活上の動作を指します2)3)。ADLは、介護を必要とする度合いを知るために評価されることもあり、ADLの低下は要支援や要介護状態につながります1)。
ADL
生活で必要な移動動作および
身の回りの動作
例)身支度、食事、移動
基本的ADLとは
基本的ADLとは、日常生活で必要な移動動作や、身の回りの動作を行う能力のことです。階段昇降、入浴、トイレの使用、食事、着衣、排泄などが含まれます2)。
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身支度 -
食事 -
服の着脱 -
トイレ -
入浴 -
移動
など
手段的ADLとは
手段的ADLとは、基本的ADLより複雑な動作を行う能力のことです。
電話をかける、買い物、食事の準備、洗濯などの家事、服薬管理、金銭管理、交通機関を使っての外出などが挙げられます2)。例えば、電話をかける場合であれば、かける相手を決める・相手の電話番号を調べる・電話番号を入力し操作する・用件を伝えるといった複数の工程と複雑な動作が必要です。
ADLが低下するときは、まず手段的ADLの低下から起こります3)。
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金銭管理 -
交通機関の利用 -
服薬管理 -
家事 -
電話をかける -
買い物
など
2
ADLが低下している場合
に見られる影響
ADLが低下するときは、まず手段的ADLの低下から起こり、次第に基本的ADLが低下していきます3)。ADLが低下すると、日常生活にさまざまな影響が現れ、要介護状態へとつながります1)。
ADL低下による 日常生活への影響の例 |
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ADLの評価方法
ADLの評価は、病院や家庭で主に医師や看護師、理学療法士、作業療法士により行われます4)。医療従事者による問診や、動作観察によって評価される場合もあれば、自分で質問用紙に記入する場合もあります1)。評価方法は、基本的ADLを評価するものと手段的ADLを評価するものがあり、評価の目的によって使い分けられています2)。
基本的ADLと
手段的ADLの評価方法
- ①Barthel Index
- 基本的ADLについて評価を行うための質問票です。要介護者などすでにADLが低下している方を対象として、医療の現場でよく使われています。整容、食事、排便、排尿、トイレの使用、車いすとベッドの間での移乗、平地歩行、更衣、階段昇降、入浴の10項目について「自立」か「要介助」か、という基準で採点を行います。必要な介助量によって点数が変化し、点数が高いほど自立しているといえます2)5)。
- ②Katz Index
- 基本的ADLについて評価を行うための質問票です。入浴、更衣、トイレの使用、移動、排尿・排便、食事の6つの項目について「自立」か「要介助」かを評価します。「自立」と評価された項目の個数によって、AからGまでの7段階の自立指標に振り分けられ、総合判定を行います2)6)。
- ③DASC-21
- 自己記入のアンケート形式で、主に行政機関が地域住民のADLを調査する場合などに使われます。基本的ADLと手段的ADLの2つについて、21個の質問で評価する方法です。基本的ADLの評価には入浴、更衣、排泄、整容、食事、移動が含まれています。手段的ADLでは買い物、交通機関を使っての外出、金銭管理、電話、食事の準備、金銭管理について評価を行います2)7)。
- ④Lawtonの尺度
- 手段的ADLについて評価する質問票です。電話をする能力、買い物、食事の準備、家事、洗濯、移動の形式、服薬管理、金銭管理の8項目を評価します2)8)。
- ⑤老研式活動能力指標
- 自己記入のアンケート形式で、主に行政機関が地域住民のADLを調査する場合などに使われます。手段的ADL(交通機関を使っての外出、買い物、食事の準備、請求書の支払いなど)、知的能動性(書類を書く、新聞を読む、本・雑誌を読むなど)、社会的役割(友人への訪問、家族や友人からの相談、病人のお見舞いなど)の13項目について「はい」か「いいえ」で回答します2)9)。1項目1点で評価され、10点以上であればおおむね自立した生活をしているといわれています10)。
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ADLの低下は対策できる?
毎日の生活で
意識するべきポイントは?
ADL低下の対策として、日ごろ家庭でできることもあります。すでにADLが低下している場合であっても、さらなる低下を防ぐことが大切です。病気などでADLが低下しているときには、かかりつけの医師や看護師など医療従事者に相談しながら慎重にできる範囲で取り組みましょう。
〈ADLを維持するためのポイント〉
- 毎日コツコツ歩いて体を動かしましょう
- 食事は1日3回バランスよくとりましょう
- よく噛んで食べてお口の機能を保ちましょう
- 外出の機会をつくりましょう