【図解】
正しい食事介助・
基本姿勢と
スムーズに介助する
ポイント
安全に美味しく食事をしてもらうために食事介助の方法を、食事前の準備から、食事の順番、最後に食後の対応までの一連の流れに沿って紹介します。正しい姿勢からスプーンの使い方、スプーン一杯の量や口を開けてくれないなどのトラブルまで分かりやすく解説します。
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安全に食事を始めるための準備一覧
食事時にしっかり覚醒していなかったり、注意が散漫になったりすると、誤嚥のリスクも高くなります。安全に食事介助を行う前の準備としては、食事をする方へのアプローチと食事をする環境を整えることの2つがあります。
食事をする方へのアプローチとしては以下を行います。
日常の生活リズムを整え、声かけをするなどして、覚醒して食事に向かえるようにする
しっかり目が覚めているときに食事時間を合わせるようにしてもよいです1)2)。
食事前に口腔ケアを行い、口の中を清潔にしておく
口内の細菌を減らします。味覚の改善や唾液の分泌の促進にもなり、口の機能低下を防ぎます1)。
準備運動として嚥下体操などを取り入れる
嚥下に必要な筋力のリラクゼーションになります。
環境の準備としては以下を行います。
食事に注意を集中できる環境を整える
人の出入りの多い場所は避け、カーテンを閉じ、テレビを消すなどして刺激を減らし、落ち着いて食事に集中できる環境をつくりましょう1)。
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【図解】食事前の正しい姿勢・
リクライニングの角度
きちんと目を覚ましてもらい、食事にふさわしい姿勢をとってもらいます。
飲み込みに大きな問題がなければ、食卓で食事を摂るのが望ましいでしょう。
座って食事をする場合
ベッドの上で食事をする場合
座って食事をする場合
自力で食べられる人はできれば食卓で座って食事を摂るようにします3)。
テーブルは腕が置けてあごが引けるような高さが適切です1)。
かかとがしっかり床につくぐらいの高さの椅子に座ると姿勢が安定しやすくなります。
むせやすい人はやや前かがみであごを引きぎみにするとよいでしょう。
「食物が胸につかえる」「飲み込んだものが逆流する」など、食道の通過障害がある人は、逆に、上体を起こしたまっすぐな姿勢で食べるようにします。食後も寝そべらず、上体を起こしておくとよいでしょう3)。
ベッドの上で食事をする場合
座れずベッドで食べる場合は、背もたれを45度以上の角度に起こして、頭の後ろにクッションや枕を置き、首がやや曲がるようにしておくと誤嚥が起こりにくくなります3)。
リクライニングの適切な角度とは?
ベッドのリクライニングの角度は45~60度とされますが、個人によって適切な角度は異なります3)。相談して、その人に適切な角度を知るようにしましょう1)。
体幹が安定しない人、口から食べものがこぼれやすい人などは、30度の傾斜が、食べ物を取り込み、送り込みしやすく、誤嚥のリスクが少ないでしょう3)。
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食事介助の
基本的な手順と注意点
嚥下機能が低下している人に実際に食事介助を行う場合は、以下のことに気をつけながら進めましょう。
食事介助の手順
介助前の注意点
- 立ったまま介助しない
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介助する人が立っていると食事をする人は介助する人を見上げる姿勢になります。
あごをあげる姿勢はむせやすくなるので立ったままの介助はしないようにします2)。 - 食事時間は長くても30~40分くらいを目安とする
- 食事時間が延びることは疲労を招き、誤嚥のリスクが高くなります2)。
- 姿勢の確認、食器など食事直前のチェック
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食事をする人が、しっかり目覚めているか、コミュニケーションがとれるか、その人に適した姿勢がとれているかを確認します。
ペースト食やゼリー食などの嚥下調整食の場合はスプーンですくいやすい深めの食器を用意しましょう1)。 - アイスマッサージなどで嚥下反射を促す
- 氷水で冷やした綿棒やスポンジブラシを舌や上あごにあてて軽く動かすアイスマッサージを行うと嚥下の反射が起こりやすくなり、誤嚥防止になります1)2)。
- バランス良く食材を与える
- ご飯の後にとろみ付きの汁物やゼリーを食べるというように、のどを通過しにくいものとしやすいものを交互に食べることで、のどに食べ物が残るのを防ぎます2)。
- 飲み込んだことを確認し、次の一口を与える
- 食事を次々に入れるとのどにたまって誤嚥の原因になります。ちゃんと飲み込んでいるかは、のどぼとけの動きを見れば確認できます。口の中から食べ物がなくなっていることを確かめてから、次の一口を入れるようにします1)。
- 食事の摂取量を確認し、記録を取る
-
何をどのように食べ、何を残しているかを実際に目で見て確認し、記録しましょう。
今後に向け、食事の形態や、食事内容、水分の摂取量がその人に合っているかどうかを検討する材料となります1)。 - 口腔ケアを行う
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口内細菌を減らし、誤嚥性肺炎のリスクを減らすために歯磨きや舌、口内の粘膜のケアを行います。歯と歯の間など汚れやすい箇所を丁寧に磨きます。最後にすすいだ水を誤嚥させないように十分注意しましょう2)。
>口腔ケアについてはこちら
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スムーズに食事介助する
3つのポイント
スプーンの取扱方法
ゼリーなどの丸のみできる嚥下食を食べるスプーンは薄くて平たいものを選ぶと食べやすいです。スプーンをあらかじめぬらしておくとゼリーがスプーンから離れやすいので、コップに氷水などを用意しておくとよいでしょう。口内にスプーンを置く位置は個人によって違いますが、のどに送り込むのが難しい場合は舌の奥に置くようします。
食べ物を一度に口に入れる量を一口量といいます。安全に食べられる一口量は個人によって異なります。
最初は3~5g(ティースプーン1杯)から始め、様子を見ながら調整します1)。
食事前や食事中の声かけの内容
誤嚥を防ぐため「噛みましょう」「飲み込みましょう」など声かけを行います。
また次々と口に食べ物を入れる場合も「しっかり飲み込んでから次のものを食べましょう」など静止の声かけをします1)2)。
食事中にリラックスできるような内容の会話から、食事の好みを聞き出すのもよいでしょう。その際は口の中やのどに食べ物が残っている状態ではないことを確認するようにします。
しかし、声かけや会話によって注意がそれ、食事に集中できなくなってしまうこともあります。声かけのタイミングは様子を見ながら行いましょう1)。
口を開けてくれない・
口の開きが悪い場合の対応方法
食事中、口を開けてくれない場合は次のような方法を試してみます。
- 好きな食べ物を食べてもらう
- 食事の雰囲気、料理の味や香りを工夫し、メリハリのあるものを出す(カレー、ケーキのように香辛料が効いているもの、甘みの強いものなど)
- スプーンを自分で持って食べてもらう
- おにぎりや寿司など、手づかみ食を試してみる
- 口に入れても送り込みをしない場合、口の反射を利用し、何ものってないスプーンをもう一度口に入れてみる。舌をスプーンで少し押し下げてみてもよい2)。
食事介助の際には、誤嚥のリスクを避けることを第一に考えましょう。目覚めているときに落ち着いて食事に集中できる環境を整え、正しい姿勢で、一口ずつしっかり飲み込んで食事が摂れるように介助しましょう。