【管理栄養士監修】
亜鉛とは?体内での
働きと多く含む食品、
摂取量について
亜鉛は体内で生成することができない必須ミネラルです。食物などから摂取する必要があり、不足しても過剰摂取しても体調不良を引き起こす場合があります。ここでは亜鉛の体内での働きや豊富に含んでいる食品と1日の摂取量、不足や摂りすぎた場合の影響について解説します。
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亜鉛とは?
体内でのはたらきと役割
亜鉛とは、からだに必要不可欠な微量ミネラルの一つです1)。亜鉛は、筋肉、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓2)3)、毛髪、消化管や膵臓3)などさまざまな組織に存在し、酵素の働きを助けてからだの機能を維持する作用や、DNAやタンパク質の合成といった細胞を新しくつくる作用などに関与しています1)3)。
さまざまな生理作用3)
- 子どもの身長の伸び、骨格の発育
- 皮膚の代謝
- 生殖機能
- 味覚の維持
- 精神・行動への影響
- 免疫機能
亜鉛は、尿から排出される量は少ないものの、便や汗、精液、月経血などから排出されます2)。また、アルコールの摂取4)や、薬剤の使用3)によって亜鉛の損失が起きることもあります。そのため、次のような亜鉛不足のリスクのある方は、積極的に亜鉛を摂取するように心がけましょう。
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亜鉛の適切な摂取量は
どれくらい?
1日の摂取目安量まとめ
日本人の成人は、亜鉛が不足気味であるといわれています3)。特に、妊娠中・授乳中の女性では、1日に必要な亜鉛の摂取推奨量に比べると著しく少ないと報告されています3)。ただし、サプリメントや亜鉛強化食品の不適切な利用によって長期に過剰摂取してしまうと、鉄や銅の吸収を阻害して貧血や銅欠乏になったり、胃の不快感を起こしたりします2)。サプリメントなどを継続して摂る場合は、亜鉛を安全に習慣的に摂取できる上限量(耐容上限量)を超えないようにしましょう。
なお、1日あたりの亜鉛の摂取基準として設定された指標はいずれも習慣的な摂取量に対するものです2)。亜鉛の場合は、献立ごとに摂取量が増減するので、1〜2週間の範囲の中で十分な摂取を目指すのがポイントです2)。
男性 | 女性 | |||||||
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推定平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量※ |
推定平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量※ |
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0〜5ヶ月 | - | - | 2mg | - | - | - | 2mg | - |
6〜11ヶ月 | - | - | 3mg | - | - | - | 3mg | - |
1〜2歳 | 3mg | 3mg | - | - | 2mg | 3mg | - | - |
3〜5歳 | 3mg | 4mg | - | - | 3mg | 3mg | - | - |
6〜7歳 | 4mg | 5mg | - | - | 3mg | 4mg | - | - |
8〜9歳 | 5mg | 6mg | - | - | 4mg | 5mg | - | - |
10〜11歳 | 6mg | 7mg | - | - | 5mg | 6mg | - | - |
12〜14歳 | 9mg | 10mg | - | - | 7mg | 8mg | - | - |
15〜17歳 | 10mg | 12mg | - | - | 7mg | 8mg | - | - |
18〜29歳 | 9mg | 11mg | - | 40mg | 7mg | 8mg | - | 35mg |
30〜49歳 | 9mg | 11mg | - | 45mg | 7mg | 8mg | - | 35mg |
50〜64歳 | 9mg | 11mg | - | 45mg | 7mg | 8mg | - | 35mg |
65〜74歳 | 9mg | 11mg | - | 40mg | 7mg | 8mg | - | 35mg |
75歳以上 | 9mg | 10mg | - | 40mg | 6mg | 8mg | - | 30mg |
妊婦(付加量) | +1mg | +2mg | - | - | ||||
授乳婦(付加量) | +3mg | +4mg | - | - |
※小児・乳児および妊婦・授乳婦では、十分な報告がないため耐容上限量が設定されていません。
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亜鉛を多く含む食べ物とは?
食品別の含有量まとめ
亜鉛が多く含まれる食品として、牡蠣(100gあたり13.2mg)や煮干し(100gあたり7.2mg)、ビーフジャーキー(100gあたり8.8 mg)などがよく知られていますが3)、煮干し100gなどは毎日食べるには難しい量かもしれません。亜鉛の摂取源としては、スーパーなどで手に入りやすく、毎日の食事に取り入れやすい食材がほかにもたくさんあります。抜け毛が気になる、味を感じにくい、肌が荒れやすい、おなかの調子が悪いなど3)、亜鉛不足を感じる方は、亜鉛を多く含む食材を積極的に摂るとよいでしょう。
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亜鉛が
不足した場合・摂りすぎた
場合
どうなる?
不足する場合
亜鉛が不足すると、慢性的な下痢2)、肌荒れ、味覚の異常、免疫機能の低下、子どもの発育遅延(体重増加不良や低身長)2)3)、食欲の低下、脱毛3)など、さまざまな症状があらわれます。症状がすでにあらわれている場合は、食事からの補給では足りず治療が必要なこともあるので3)、気になる症状がある場合には医師に相談することが大切です。
過剰摂取の場合
サプリメントや亜鉛強化食品の誤った利用によって亜鉛を過剰摂取した場合、発熱、悪心、嘔吐、胃痛、下痢などの症状があらわれることがあります1)。また、亜鉛の過剰摂取は、鉄や銅の吸収を阻害して貧血や銅欠乏を招いたり、HDLコレステロールの低下を引き起こしたりするといった報告もあります2)。
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亜鉛についてよくある質問
亜鉛を摂取すれば髪や身長が
伸びるというのは本当ですか?
亜鉛が大きく欠乏すると、脱毛や低身長といった症状があらわれることがあります3)。その場合は、亜鉛を補充することで症状の改善がみられることがありますが、医療機関へ相談することをお勧めします。
亜鉛はビタミンと一緒に摂ると
吸収率が良くなりますか?
ビタミンCは、亜鉛の吸収を助けるといわれています3)。また、クエン酸や、肉類・魚類に多く含まれる動物性タンパク質も亜鉛の吸収を促進するといわれています3)。亜鉛は肉や魚などの動物性タンパク質を含む食品に多いため5)7)、ビタミンCを一緒に摂れるメニューがおすすめです。
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亜鉛を摂取できる
おすすめレシピ
亜鉛の供給源となる食材を使った、簡単にできるレシピを紹介します。
柔らか牛モモの中華風炒め
- 材料(1人分)
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- 牛もも肉
- 70g
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- 玉ねぎ
- 20g (1/8個)
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- ピーマン
- 25g (1/2個)
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- 赤パプリカ
- 20g (1/6個)
-
- カシューナッツ
- 15g
-
-
- 片栗粉
- 大さじ1 (9g)
-
- 卵
- 1/4個(13g)
-
- 塩・胡椒
- 少々
-
-
- ごま油
- 小さじ1/2 (2g)
-
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- 鶏ガラスープの素
- 小さじ1/2 (1.3g)
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- 酒
- 大さじ2(30g)
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- オイスターソース
- 小さじ1 (6g)
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- 栄養価(1人分)
-
-
- エネルギー
- 322kcal
-
- たんぱく質
- 16.9g
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- 亜鉛
- 3.9mg
-
- 食塩相当量
- 1.0g
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- 作り方
-
- 牛もも肉は細切りにしてAをもみこみ、30分ほど置き下味を付けておく。
- 玉ねぎは薄切り、ピーマン・赤パプリカは縦半分に切って種とへたをとり、縦に細切りにする。Bは混ぜ合わせておく。
- フライパンにごま油を入れて熱し、1を入れ中火で炒める。肉の色が変わり始めたら2を加え2分程炒める。
- カシューナッツ、Bを加えて全体に絡め器に盛り付ける。
ポイント
- 加熱すると硬くなりやすいもも肉は、片栗粉と卵をしっかりもみこむことでやわらかく仕上がります。
- 4の工程は、全体が混ざったら早めに火を止め、加熱しすぎないようにします。