栄養失調とは?
気になる症状と原因、
予防するには
【セルフチェック】

栄養失調とは、からだに必要なエネルギーやたんぱく質、ビタミンなどが不足した状態です。たとえば、食事は摂っているけど、エネルギー源の主食(ごはん、パンなど)が多く、肉や魚などたんぱく質や、野菜が不足してビタミンが足りていないような状態です。朝ご飯を食べなかったり、おにぎりやパンだけで済ませたりしている方もいるのではないでしょうか。そのような方は栄養失調予備軍です。ここでは、栄養失調の原因やセルフチェックリストのほか、バランスのよい食生活のためのポイントなどをご紹介します。

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栄養失調とは

栄養失調とは、からだに必要なエネルギーやたんぱく質、ビタミンなどが不足した状態です1)。栄養の摂取不足のほか、栄養素をうまく消化・吸収することができない、栄養素をからだの中でうまく分解・合成できないといった場合でも栄養失調が起こることがあります2)
栄養失調というと、発展途上国でみられるような十分な食事がない環境で起こるものというイメージがあるかもしれません。しかし、食事をたくさん摂っている方であっても、特定の栄養素の摂取不足などにより、栄養失調が起こることがあります3)

若い女性に増加中?
新型栄養失調とは

新型栄養失調とは、ダイエットによる極端な食事制限や栄養バランスの悪い食事などを原因とする栄養失調です。特に、摂取エネルギーが足りないだけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどのからだに必要な栄養が摂取できていない状態をいいます。女性に多くみられる便秘や肌荒れ、冷えなどの不定愁訴の原因の1つに、新型栄養失調があると考えられています。

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栄養失調になるとどうなる?

栄養失調になると、体重減少や筋力低下、骨密度の低下や貧血などにつながります。そのほか、免疫が低下して感染症にかかりやすくなったり、寒さを感じやすかったり、ぼんやりするといった症状が現れます2)4)5)。女性であれば月経周期の乱れや無月経の状態になることもあります。若い女性の栄養失調は、将来の妊娠や出産に影響することもあります5)6)

体重減少

摂取エネルギーが不足すると、体重が減少します4)。体重が急激に減るようなことがあれば注意が必要です5)

筋力の低下

エネルギー摂取量が不足すると、からだの筋肉を分解してエネルギー源にしてしまいます2)。たんぱく質不足は、筋力低下の原因となることもあります。たんぱく質の必要量の目安は、体重1kgあたり1gです。体重が50㎏の方では、1日50gのたんぱく質が必要です。これは卵にすると5~7個分、赤身の肉では250gに相当します7)。しゃがんだ姿勢から膝に手をつかずに立ち上がれない、階段や坂道を上りづらいと感じることがあれば注意が必要です5)

貧血

食事量の減少や偏った食生活は、鉄分不足につながり、鉄欠乏性の貧血が起こることがあります4)。月経のある年代の女性では、月経による血液の喪失により鉄欠乏性貧血になりやすいため、注意が必要です。貧血になると頭痛、肩こり、冷え、疲労感、息が切れやすいなどの症状が出てきます。さらに悪化すると立ちくらみなどを起こすようになります。

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なぜ栄養失調になる?
主な原因とは

日本における栄養失調の主な要因は、食事の摂取不足、栄養バランスの悪い食事、消化・吸収障害、代謝障害、心理的な要因による摂食障害です1)2)

高齢者の栄養失調8)

加齢による咀嚼・嚥下機能の低下や消化吸収能力の低下、視覚・嗅覚・味覚の低下が主な原因です。また、次のような生活習慣も栄養失調につながることがあります。

高齢者が低栄養に陥りやすい
さまざまな問題

  • 歯が悪くて、よく嚙んで食べることができなくなる。
  • 高齢夫婦のみ、あるいは単独世帯で、食事の用意が面倒になる。
  • 足腰の機能の低下などにより、買い物が不自由になる。
  • 栄養知識の不足により、食生活が偏る。
  • 規則正しい生活から遠のき、食事リズムが乱れがちになる。
  • ほかの人が作った料理が口に合わないため食が細くなる。
  • 経済的な問題や、持病、薬の影響。高齢者に多い抑うつ症状は見過ごされがちです。

若い世代の栄養失調

若い人でも栄養失調になることがあります。極端なダイエットや下剤の乱用、神経性の食欲不振、栄養バランスの悪い食生活が主な原因です1)特に神経性の食欲不振(摂食障害)は、10歳前から30歳くらいの思春期から青年期の女性に多くみられます2)。10代の成長期に栄養失調となり月経が来なくなったりすると、子宮の発育に影響し、将来的に妊娠や出産に悪影響がでることもあります。

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もしかして栄養失調
まずは簡単セルフチェック5)

栄養失調かどうかは、以下のような点が目安となります。

  • 体重が減った
  • 低体温(35度台)
  • 寒がりになった、手足が冷える
  • 顔色が悪い
  • 髪が薄くなった
  • 低血圧になった
  • 脈が遅くなった
  • 皮膚が乾燥したり、尿量が少なくなった
  • 腹痛や腹部膨満感、便秘がある
  • 筋力が低下した
  • 疲れやすい
  • 月経周期が乱れている
  • ぼんやりするなど低血糖の症状がある
  • 元気がない、ぐったりしている

複数項目に該当する場合や症状が続く場合は、医師の診察を受けることをおすすめします。

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栄養失調の
予防と改善ポイント

バランスのよい食事

1日の食事で、主食(パンやご飯など)、副菜(野菜を含むおかずなど)、主菜(肉や魚など)、牛乳・乳製品、果物をまんべんなく食べられるよう意識してみましょう9) 10)。例えば、忙しい朝はパンやご飯といった炭水化物だけを摂るのではなく、簡単に用意できるゆで卵やハム、トマトやバナナ、ヨーグルト、野菜ジュースなどをプラスすると、栄養のバランスがアップします9)。おにぎりやパンを買って食べるにしても、鮭やシーチキン、ハムなどたんぱく質を多く含む具材を選ぶのも良い方法です。
高齢の方で、食欲があまりないような場合は、油が少なく、たんぱく質が多い具材を選んで、少しずついろいろな食材が入ったメニューを選ぶのがおすすめです10)。鶏肉や白身魚、豆腐などが食べやすいです。

適度な運動

しっかりと体を動かし、お腹を空かせることも大切です。いつもより少し早く歩いてみたり、テレビを見ながら軽い筋力トレーニングしてみたり、普段の生活でこまめにからだ動かす習慣をつけましょう9)10)。運動する習慣をつけると、認知症が予防でき、さらに転倒による骨折や肺炎を起こしにくくなるなど、大きなメリットがあります。10分でも、週に1回でも良いので、始めてみましょう。

健康補助食品やサプリメントの活用

高齢の方は、食が細くなったり、咀嚼・嚥下能力が低下したりして、十分な食事を摂ることが難しくなる場合があります。そのような場合は、医師や管理栄養士に相談したうえで健康補助食品を活用してみましょう11)

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不足しがちな
栄養素食品一覧

食べる量が少なかったり、偏った食事を続けたりすると特定の栄養素が不足することがあります。日々の食事で不足しがちな栄養素を補うのにおすすめの食品をご紹介します。

不足しがちな栄養素を摂りやすい食品7)
栄養成分 手軽に入手できて、1食あたりの栄養素含有量が多い食品
たんぱく質 するめ、さくらえび、からあげ、サラダチキン
炭水化物 パン、おにぎり、スパゲッティ、うどん、中華麺
ビタミンA ニンジンジュース、野菜ジュース、レバー
ビタミンB₁ とんかつ、生ハム、豚の生姜焼き
ビタミンB₂ レバー、アーモンド、パルメザンチーズ
ナイアシン たらこ、ピーナッツ、焼きさば、ささみフライ、焼鳥
ビタミンB₆ レバー、塩ざけ、焼鳥、まぐろやかつおの刺身
ビタミンD しらす干し、さけ水煮缶、いわしフライ、いわし缶詰、卵黄
カルシウム チーズ、小魚、牛乳
あさりの缶詰、レバー、削り節佃煮、いり大豆、フライビーンズ
亜鉛 かきの燻製油漬け缶、レバー、ビーフジャーキー、焼肉弁当