脱水症の症状とは?
原因と予防の
ためにできること
【セルフチェック】
脱水症とは、からだの中の水分や、ナトリウムなど電解質のバランスが崩れた状態のことです。重度になると意識障害につながる危険性もあるため、予防や早期に発見して速やかに対処することが重要です。ここでは、脱水症が起こる原因や症状が出た際の対処法などについてご紹介します。
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脱水症とは
脱水症とは、水分や電解質のからだに入る量と、出る量のバランスが崩れ、体液量が減少した状態のことです1)2)。体液をつくるのに必要な水分や電解質の摂取が不足したり、体液が過剰に失われたりすると、体液量が減少してしまいます。そうなると、からだの機能をうまく維持できなくなり、のどの渇きやだるさ、めまい、意識障害などが引き起こされます1)2)。
特に高齢者は、体内の体液量が少なく、また体液量の減少を感知し、「渇き」という感覚を通して水分補給を促す自律神経の働きが低下しています。そのため、若い世代より一層脱水症を起こしやすく、注意が必要です1)。
脱水症と熱中症は違う?
熱中症とは、高温多湿な環境下で起こる健康障害の総称を指します2)3)。体内の水分や電解質のバランスが崩れたり、体温調節機能がうまく働かなかったりすると、体内に熱が溜まり、筋肉のけいれんや、吐き気やだるさなどが現れます2)。
一方で、脱水症は体内の水分や電解質が失われ体液量が減少した状態です1)2)。つまり、脱水症は熱中症を引き起こす1つの要因でもあります。脱水状態に素早く気づき、適切な対策を行うことが、熱中症予防にも重要です。
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脱水症になるとどうなる?
症状の特徴
脱水症は健康時の体重に対する体液の減少率によって、軽度、中等度、重度に区分されています1)。
軽度 (体重の3~5%の体液減少) |
のどの渇き、だるさ、めまい、ふらつき1)4) |
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中等度 (体重の約6〜9%の体液減少) |
頭痛、めまい、脱力感1)4) |
重度 (体重の10%以上の体液減少) |
意識障害、けいれん1) |
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日常生活でも脱水症になる?
原因となりやすい人の特徴
脱水症の原因として、食事・水分補給の不足、発汗、下痢、嘔吐などが挙げられます1)。また、なりやすい人は、高齢者、スポーツやからだを動かす仕事をされている方です。
高齢者は、水分を蓄える働きがある筋肉が加齢により減少して、体液量が少なくなっています。体液量が少ないと体内の水分バランスを調整するのが難しく、脱水症を引き起こしやすくなります1)。自律神経の働きが低下していることに加え、特に認知症の方は、天候や気温に合わせた衣服や寝具の調節や、窓の開閉や空調調節など室内の温度管理をすることが難しかったり、日よけ対策や水分補給を適切に行うことができなかったりするため、脱水症に注意が必要です2)。
運動により体温が高くなると、発汗が促進されて脱水が進行していくため4)、スポーツやからだを動かす仕事 をしている場合は、若い方であっても脱水症に注意が必要です。
冬なのに脱水症?
「かくれ脱水」に気を付けて
脱水症は夏だけでなく冬場にも起こります。特に冬場は脱水症対策への意識が薄く、適切な水分補給を行わないことで脱水症の前段階である「かくれ脱水」となる例がみられます5)。
かくれ脱水の症状としては、皮膚の乾燥やカサつき、のどの渇き、口内の粘つきなどが挙げられますが、自覚しにくい場合がほとんどです5)。特に高齢者で、冷たい飲食物を好む方や利尿薬や便秘治療薬を内服している方、BMIが25以上の方などは、日常的にかくれ脱水に注意する必要があります6)。
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これって脱水症?
簡単セルフチェック2)7)
脱水症になると、次のような状態になることがあります。
子供や高齢者は脱水の自覚症状を訴えることが難しい場合があります。保護者や介助者が次のような症状がないかどうかチェックすることも重要です。
- 外気で冷えていない場合でも手や足の指先が冷たい
- 口や唇、舌が乾いている
- 親指の爪先を押したあと、2秒間以上経っても指先に赤みが戻らない
- 皮膚を摘んだあと、3秒間以上経っても皮膚がつままれた形から戻らない
- わきの下が乾いている
- 目が落ち窪んでいる
- 呼吸が荒い
- ウトウトしている
- 尿量が極端に少ない、または出ていない
- 1日に5回以上、水のような下痢が大量に出る
上記のセルフチェックで当てはまるものがあれば、適切な対処を行い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
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脱水症の症状が出たらどうする?
今すぐできる対処法と受診の目安
脱水症の進み具合にあった適切な対処を行うことが大切です。
軽度~中等度
自力で口からもの摂れる場合は、速やかに経口補水液を補給しましょう1)。経口補水液は、水分をからだに吸収しやすいよう水分・塩分・糖分がバランス良く含まれています8)9)。嚥下障害があるような方はゼリータイプの経口補水液がおすすめです1)。
このような対策をとったあとも症状が良くならない場合は医療機関を受診しましょう。
重度
意識障害やけいれんなどがみられる場合は、救急車を呼び、速やかに医療機関を受診しましょう。
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脱水症を予防するには
日常生活で行うことができる脱水症予防のポイントを2点ご紹介します。
こまめな水分補給
からだの水分バランスを保つためには1日に1,000〜1,500mLの水分補給が必要です。起床時、就寝時、毎食時、10時、15時の合計7回に分けコップ一杯(200mL)の水分補給を行うとよいでしょう2)。経口補水液のほか、塩分控えめの味噌汁や野菜ジュース(糖分が多いので飲み過ぎに注意)などを摂ることで、ナトリウムやカリウムといった電解質を水分と同時に補給できます2)。
認知症など、自分で積極的に水分補給を行うことが難しい方には、介助者がこまめに水分補給を促すようにしましょう2)。
室内の気温・湿度管理
屋外の炎天下で直射日光を浴び続けることはもちろん、室内においても温度・湿度状態が適切でないと脱水症につながります2)。居室の温度は28度以下に設定し、湿度は50~60%を維持できるように心がけましょう2)。
【高齢者】脱水症予防のポイント1)
高齢者はのどの渇きを感じる機能が低下しているため、自覚しないうちに脱水状態になってしまうことがあります。まわりの家族や介助者が、些細なからだの変化に気づけるよう意識するほか、脱水症を予防するための生活習慣づくりが重要です。食生活を見直すことで食事からの水分や電解質の摂取量を増やしたり、時間を決めて定期的に水分を補給したりすることを意識しましょう。