【5分でわかる】
高齢者の
熱中症対策
原因・対処法について

高齢者の熱中症は、本人も気づきにくいため注意が必要です。
エアコンをつけなかったり、水分補給を拒否したりする方がいるなど、対策が上手くいかないことも少なくありません。ここでは高齢者向けの熱中症対策と原因をわかりやすく解説します。熱中症対策を正しく把握し、高齢者の熱中症対策をしましょう。

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高齢者向けの
熱中症対策7項目

熱中症で救急搬送される人のうち、実に約半数は65歳以上の高齢者です。安全だと思いがちな自宅で発症することが多い高齢者の熱中症対策のポイントをまとめました。

「気温・湿度」を測って現在の温度を知る
部屋に温湿度計を置き、こまめにチェックしましょう。室温は28度以下、湿度は50~60%くらいに保ちます1)2)。ただし、室温が28度でも湿度が80%以上ある場合は注意2)。暑いと感じたときには熱中症を発生している可能性もあります。早めの行動を心がけましょう。
「水分補給」はこまめに行う
高齢者は、若い人より脱水症状を起こしやすく、回復しにくい特徴があります1)。夏は汗をかく機会が増えるので、のどが乾いていなくてもこまめに水分を摂りましょう。冷たい飲み物が苦手な方は、温かい飲み物でも大丈夫です2)。水を飲み込むことが難しい場合は、市販の水分補給用のゼリーなども上手に利用してください。
>水分補給の工夫についてはこちらへ
「室内の気温を適温」にすることを意識する
「室温を28度に保つこと」と「エアコンの設定温度を28度にすること」は違います。部屋の階や日当たりによって室温は変わるので、温湿計でこまめにチェックし、それに応じてエアコンの設定温度を変えるようにしましょう1)
「外出時」の熱中症対策ポイント
外出時の服装は、白のゆったりとした服がおすすめです。白は太陽の熱を吸収しにくく、ゆったりとした服は皮膚からの熱を逃しやすいためです。日傘は、日陰をつくる黒色がおすすめです。木陰で風が気持ちよい場所ではなるべく肌を出し、皮膚から熱を逃しましょう1)
夏場のマスク着用は、熱中症のリスクを高めます。感染症対策が必要な場合、屋外で他人と2メートル以上の距離が保てるときはマスクを外しましょう。マスクを着ける必要がある場合は、こまめに水分を摂り、周囲の人から離れた場所でマスクを外し休憩する時間を適宜設けましょう3)
「お風呂」も注意
お風呂に入ると汗をかいて水分が失われます。入浴前後に忘れずに水分を摂りましょう。また、湯温は40度以下のぬるめに設定し、長湯をしないように注意しましょう1)
「就寝時」も注意が必要
就寝中に熱中症になる高齢者も少なくありません1)。就寝前や起床後の水分摂取に加え、枕元に飲料を置いておくと安心です。また、就寝時のエアコンの使用を「からだによくない」と考える方もいますが、それは使い方次第です。室温を28〜29度に保つように連続的にエアコンを使用することで熱中症対策に加え睡眠の質も上げることができます4)
「周りの人」が注意すること
高齢者のお世話をする人は、1体調、2具合、3環境の3点に気を配りましょう1)
  1. 体調元気はあるか、食欲はあるか、発熱はないか
  2. 具合体重、血圧、心拍数、体温の変化
  3. 環境部屋の温度・湿度は適正か、風通しや換気は十分か、日当たりが強すぎないか

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熱中症対策でよくある
問題と解決策

熱中症対策をしたくても高齢者がその気になってくれないといったことはありませんか? ここではそんなお悩みを解決するヒントをお伝えします。

なぜ高齢者は暑いのに
「寒い」というの?

皮膚には「温かい」と感じる温点が分布していますが、温点の数は年齢とともに減っていきます。このため、個人差はありますが、60歳を過ぎる頃から暑さを感じにくくなるのです。高齢者本人が「これくらいの暑さは大丈夫」と言っても、温度や湿度が高い場合は周囲の人が室温を適正に保ちましょう。その際、風が直接当たらないようにするのがポイントです1)

エアコンをつけてくれない、
なぜ嫌うの?

エアコンによるからだの冷えや、節電への高い意識からエアコンを嫌う高齢者も少なくありません1)2)。これらに加え、年齢を増すにつれ皮膚の温度感覚が低下し暑さを感じにくくなるのもエアコンを嫌う理由の一つです1)。「部屋の温度計が28度をこえたらエアコンをつけましょう」といったルールを決めるといいかもしれません。

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高齢者が熱中症になりやすい
2つの理由

高齢者は夏でもエアコンをつける時間が短く、温度も高めに設定する傾向があります。そのため、高齢者の部屋は温度も湿度も高くなりがちで、熱中症のリスクも高まります1)。こういった高齢者特有の行動の背景にあるからだの特徴を解説します。

暑いと感じにくくなり、
体温調整難しくなる

加齢に伴い皮膚で温度を感じにくくなると、体温を調節する機能も低下します。その結果、からだに熱がたまり熱中症を起こしやすくなるのです。
そこでおすすめしたいのが、1日1回、汗をかく運動です。歳をとっても日常的に運動を行うと、体温調節機能の低下が緩やかになります。特に、運動後30分以内に糖質とタンパク質を含む食品(例:牛乳1〜2杯)を摂るとよいようです。血液量が増え、からだにたまった熱を外に逃がしやすくなることがわかっています1)

のどの乾き感じにくくなる

高齢者は、脱水が進んでいてものどの乾きを感じにくく、水を飲むタイミングが遅れます1)5)
水分バランスを保つには、1日に1,000~1,500mLの水分摂取が必要です。起床時、朝食時、10時、昼食時、15時、夕食時、就寝前の合計7回のタイミングにコップ1杯(200mL)の飲み物を飲めば1,400mLの水分が摂れます2)。特に夏場は、このように定期的な水分摂取を意識しましょう。

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熱中症のサイン?
と思った時の
対応方法

熱中症を疑った場合は、なるべく早く体温を下げることが大切です。風通しのよい日陰エアコンの効いた室内に移動させ、衣服を脱がし濡れたタオルを当てたりうちわや扇風機で風を当てたりします

年齢とともに変化する暑さに対するからだの特徴を知り、熱中症対策のポイントをおさえながら暑さと上手に付き合っていきましょう。