医師監修

良い睡眠には
「質」も大切
― 今日から見直す睡眠習慣

監修:白濱 龍太郎
医療法人社団RESM 理事長
日本睡眠学会評議員・総合専門医
日本オリンピック委員会医科学強化スタッフ
慶應義塾大学先端科学技術研究センター 訪問教授
福井大学医学部客員准教授

睡眠の“量”だけでなく
“質”に注目

「しっかり寝ているはずなのに疲れが取れない」「朝すっきり起きられない」
――その原因は、睡眠の“量”だけでなく“質”にあるかもしれません。

良い睡眠のためには、
この両方が大切です。

睡眠の量(時間)
個人差がありますが、
6時間以上を目安に
必要な睡眠時間を確保
睡眠の質(休養感)
食生活や運動などの生活習慣や、睡眠環境などの見直しで、睡眠の質を向上

睡眠の質を高めるとは?

睡眠の質とは、

  • ぐっすり眠れたと感じられる
  • 朝、心身が回復したと実感できる

といった睡眠休養感(睡眠で休養 がとれている感覚)に深く関係しています。
睡眠時間を確保するだけでなく、「眠りの質」を整えることを意識しましょう。

睡眠の質を高めるための
ポイント

快適な睡眠環境の整備

日中になるべく日光を浴びる

起床後および日中に光を多く浴びることで、体内時計が調整されます。睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が夜間に増え、就寝時の速やかな入眠につながります。

寝室にはスマートフォンやタブレットを持ち込まない

就寝の約2時間前から、メラトニンの分泌が始まります。それ以降にスマートフォンなどの強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられて入眠が妨げられることが報告されていますので、就寝の2時間前頃からは使用を控えるのがおすすめです。

寝るときは暗くして寝る

寝ている間は弱い光であっても中途覚醒を増やし、睡眠の質を下げることが報告されています。照明は消し、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながります。夜間トイレなどで起きる場合は、転倒しないよう間接照明や足元灯などを活用しましょう。

温度

寝室は暑すぎず寒すぎない温度に調節する

睡眠にはヒトの深部体温(カラダ表面の皮膚の温度ではなく、臓器などカラダ内部の温度)の変動が大きくかかわっています。深部体温は24時間周期で変動しており、日中覚醒しているときに上昇し、睡眠時には低下します。深部体温が低下し始めると入眠しやすい状態になるため、この変動を妨げない温度環境を整えることが大切です。

夏は寝室を涼しく、冬は寝室を就寝前に暖かくしておく

夏場、寝室の室温が上昇すると、睡眠時間が短くなり、睡眠効率が低下することが報告されています。また、冬場など寝室の室温が低すぎると寝つきが悪くなることが報告されています。夏は25~28℃、冬は18~22℃が目安です。

就寝1~2時間前に入浴する

就寝前の入浴は、手足の血管を拡張させ、入浴後カラダの深部体温を低下させやすくし、速やかな入眠をもたらすことが報告されています。就寝の約1~2時間前に入浴することがおすすめです。

静かな睡眠環境を確保する(騒音対策)

騒音は、寝つきをしにくくする、覚醒頻度を増加させる、深い眠りを減らすことが報告されています。カーテンを防音機能があるものに取り換えたり、寝床の位置をできるだけ窓から遠くに移動させることも有効です。

規則正しい生活習慣の確立

運動

適度な運動習慣を身につける

睡眠は、日中の活動で消耗した体力を回復させる役割もあるため、日中の活動量が眠りの量や質に影響します。適度な運動習慣を身につけることで、寝つきをしやすくし、中途覚醒を減らすことで睡眠時間を増やし、睡眠の質を高めます。

運動の頻度は週に数回以上など、習慣的に続けることが効果的です。難しい場合は、最初は軽い運動を短時間でよいので続けてみましょう。

食事

しっかり朝食を摂り、就寝直前の夜食を控える

朝食を抜くと体内時計が後ろにずれてしまい、夜間の睡眠に影響します。また、睡眠直前の2時間以内に食事をとると、睡眠の質を低下させる可能性があります。なるべく決まった時間に食事をするよう心がけましょう。

リラックス

就寝前にリラックスする

脳の興奮を抑えてスムーズに眠りにつくためには、就寝前に少なくとも一時間は家事や仕事、勉強に追われずリラックスする時間を持つことが有効です。瞑想、ヨガ、音楽、アロマなど、自分に合ったリラクゼーション法を見つけてみましょう。

メリハリ

日中の活動と夜間の休息・睡眠にメリハリをつける

夜更かしや不規則な生活習慣は、体内時計の乱れや、睡眠不足、睡眠の質の低下を招きます。日中は明るい環境でできるだけ活動的に過ごし、夜は暗い環境でゆったりとリラックスして過ごすようにしましょう。

嗜好品の摂取の見直し

カフェイン

  • 1日に摂取するカフェイン量が増えれば増えるほど、睡眠時間を短縮し、睡眠の質を低下することが報告されています。カフェインの摂取量は1日400㎎(コーヒー700cc程度)までに控えましょう。
  • 夕方以降のカフェイン摂取は、少量でも睡眠に影響するため控えましょう。

アルコール

  • アルコールは一時的に寝つきを良くしますが、睡眠の質を悪化させ、飲酒量が増えるにつれて中途覚醒が増えることが報告されています。晩酌は控えめにし、寝酒はしないようにしましょう。

ニコチン

  • たばこに含まれるニコチンは覚醒作用があり、眠りを妨げます。睡眠やその他の健康のためにも禁煙は控えましょう。

睡眠の質を高める
食品成分

食品成分の中には、睡眠の質を向上することが報告されているものがあります1)

主な食品成分
成分カテゴリ 成分名
主な食品成分
アミノ酸 GABA、L-テアニン、グリシン
糖タンパク質 ラクトフェリン
乳酸菌 Lactobacillus brevis SBC8803

GABA(ギャバ)とは

GABA(γ-アミノ酪酸)は、
ヒトの体内や植物中に広く存在しているアミノ酸の一種です2)

GABAの摂取は、

  • 寝つき(入眠の時間)
  • 一時的なストレスを感じている時の眠りの深さ
  • すっきりとした目覚め(起床時の気分の良さ)

など、睡眠の質の向上に役立つことが報告されています 3)

食物では、大豆、発芽玄米、ヨーグルトなど幅広い食物に含まれています 2)
睡眠に悩まれている方は、毎日の食生活でGABAを摂ることを意識しながら、必要に応じてサプリメントなどの食品で補うこともおすすめです。

GABAを含む食材の例 4)

種類 食材 GABA含有量
(食品100gあたり平均量)
穀類 玄米 3㎎
発芽玄米 5㎎
いも類 じゃがいも 43㎎
豆類 大豆 7㎎
野菜類 西洋カボチャ 56㎎
大豆もやし 30㎎
トマト 57㎎
果物類 ブドウ 17㎎

睡眠の質を
高めるためのチェック

ご自身の生活を振り返り、以下のポイントを意識してみましょう。

睡眠の質を高めるためのポイント
日中になるべく日光を浴びる
寝室にはスマートフォンやタブレットを持ち込まない
できるだけ暗くして寝る
温度 寝室は暑すぎず寒すぎない温度に調節する
夏は寝室を涼しく、冬は就寝前に暖かくする
就寝する1時間から2時間前に入浴する
静かな睡眠環境を確保する
屋外の騒音が気になる場合には、騒音を遮断する
生活習慣 適度に運動する
しっかり朝食を摂り、就寝直前の夜食を控える
就寝前にリラックスする
日中の活動と夜間の休息・睡眠にメリハリをつける
嗜好品 カフェイン摂取量は1日400mg(コーヒー700cc程度)までにする
夕方以降のカフェインの摂取は控えめにする
晩酌は控えめにし、寝酒はしない
禁煙する
食品成分 睡眠休養感を高める食品成分の活用(GABAなど)

まとめ

良い睡眠のためには、

  • 睡眠時間を確保すること
  • 睡眠の質を高めること

この両立が重要です。
日々の生活習慣や睡眠環境を見直し、
「量」だけでなく「質」にも目を向けた睡眠を意識してみましょう。

参考文献

  • ・厚生労働省, 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会: 健康づくりのための睡眠ガイド2023. 令和6年(2024年)2月
  • ・厚生労働省, 知っているようで知らない睡眠のこと

引用文献

  1. 日本臨牀. 78(6): 735-742,2020.
  2. Molecules, 24(15): 2678(2019).
  3. Food Sci. Biotechnol. 25(2): 547-551(2016).
  4. 農研機構:機能性成分含有量データ
    https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/contens/ffdb/ffdb.html
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